「ところで平凡な俺よ、下を向いている暇はあるのか」

田中龍之介

漫画『ハイキュー!!』

この言葉は、漫画『ハイキュー!!』の中で、田中龍之介が自分自身に向けて放った言葉です。でも私は、これがただのセリフだとは思えませんでした。むしろ、私たち誰もが心のどこかで必要としている、大事なメッセージだと感じました。

人生は、思い通りにいかないことの方が多いですよね。どれだけ努力してもすぐには結果が出なかったり、自分には特別な才能なんてないんじゃないかと悩んでしまったり…。私も、そんなふうに落ち込んだり、自信をなくしたことが何度もあります。

でも、田中のこの言葉には、そんな不安や弱さを吹き飛ばしてくれる力があります。田中自身も、自分を「平凡」だと認めています。けれど、それを言い訳にはしませんでした。「平凡な自分」にもできることがあると信じて、必死に前を向いて、コートに立ち続けたんです。

私はその姿に、すごく勇気をもらいました。

「自分は平凡だから…」と諦めるのは簡単です。でも、どんな人だって、努力することはできるし、諦めないことは選べるんですよね。顔を上げて、もう一度前を向けば、きっと今まで見えなかった景色が見えてくる。そんなふうに思わせてくれる、あたたかくて強い言葉だと思います。

もし今、あなたが自分のことを「平凡だ」と感じて、つらい気持ちになっているなら、この言葉を思い出してほしいです。たとえ平凡でも、悩んでいても、落ち込んでいても、まだ下を向いている暇はありません。あなたの頑張りは、きっと無駄にはならないし、どんな小さな一歩でも、未来を変える力になるはずです。

私たちはつい、自分にないものばかりに目を向けてしまいがちです。誰かの才能や、華やかな結果を見て「自分には無理だ」「自分は平凡だから…」と心が沈んでしまうこともあると思います。でも、田中龍之介のこの言葉が教えてくれるのは、平凡であることが決してマイナスではないということです。

平凡だからこそ、地道な努力ができる。特別じゃないからこそ、諦めない強さが育つ。人と比べるのではなく、自分のできることをコツコツと積み重ねていくことが、一番の近道かもしれません。

結果がすぐに出なくても焦らなくて大丈夫です。つまずいたり、立ち止まったりしながらも、また顔を上げて進もうとする、その姿が何よりもカッコいいと私は思います。だからこそ、どんなに平凡でも、自分を信じて前を向いてほしい。下を向いている暇なんて、本当はどこにもないから。私もそうやって、一歩ずつ進んでいきたいです。

あなたにも、まだまだできることがあるし、あなたの平凡だと思っている部分も、きっと誰かにとっては支えになっています。だからどうか、自分を責めすぎずに、胸を張って歩いていってくださいね。

引用元

古舘春一『ハイキュー!!』第30巻、第263話「パイセンの意地・2」、集英社、2018年