「何かを残さなきゃ                                  生きてる意味がないなんて、                           そんなバカな話があるもんか。                   生きてくれればいい、                       一緒にいられればいい、                     俺はもうそれだけでいいんだ」

森田忍

漫画『ハチミツとクローバー』

私たちは日々、目に見える成果や、誰かからの評価を求めてしまいます。何かを残さなければ、自分の存在に意味がないような気がして、無理をしてしまうこともあるでしょう。でも、そうやって頑張り続けていると、いつの間にか心がすり減って、疲れ果ててしまうことがあります。

そんなとき、この言葉は心に響いてきます。

「生きていてくれれば、それだけでいい」そう言い切るその優しさに、どこか救われる気がするのです。

何かを残すことや、目に見える成果を追いかけることは決して悪いことではありません。でも、それだけがすべてではないはずです。人はただ生きて、そこにいるだけで、誰かの心の支えになっていることがあります。自分では気づかなくても、隣で一緒に過ごすだけで、ほっとできる人がいるのです。

何も残せていないと思い込んでしまったとき、自分に価値がないと感じたときこそ、思い出してほしい。この言葉が教えてくれるのは、生きていることそのものが、もう十分すぎるほどの意味を持っているということです。

頑張れない日があっても、前に進めない日があっても、それでも大丈夫。ただ生きてくれているだけで、もう誰かは救われています。そう思えるだけで、ほんの少し、心が軽くなるはずです。

どうか、そのままでいてください。あなたの存在は、誰かにとって、何より大切なものなのですから。

引用元

羽海野チカ『ハチミツとクローバー』第10巻、第71話「ハチミツとクローバー」、集英社、2006年