「グーみたいな奴がいて チョキみたいな奴もいて パーみたいな奴もいる」

南波六太

漫画『宇宙兄弟』

私たちは毎日、たくさんの人と出会い、関わり合いながら生きています。でも、そんな日々の中でふと、「自分って、みんなと違うな…」と感じてしまう瞬間はありませんか?
誰かと比べて、自分が劣っているような気がしたり、自分の存在に自信をなくしてしまったり…。そんな気持ちになるのは、決してあなただけじゃありません。きっと、誰しもが一度は感じることなのです。

この言葉はとてもシンプルな言葉ですよね。でも、この短い一言の中には、たくさんの優しさと、私たちへの大切なメッセージが込められています。

グー、チョキ、パー。それは、じゃんけんの手。でも、ただの遊び道具じゃなく、それぞれが違う形をしていて、違う役割を持っています。
グーは力強くてまっすぐな存在。チョキは器用で鋭い一面を持つ存在。パーは優しくて包み込むような存在。どれが正しい、どれが優れているなんて、そんな基準はどこにもありません。みんなが違うからこそ、バランスが取れて、世界は成り立っているんです。

人も、同じです。

みんなが同じ性格や、同じ考え方、同じ強さを持っていたら、この世界はきっと味気なくて、面白くないものになってしまうでしょう。
誰かは不器用だけどまっすぐな「グー」かもしれないし、誰かは少しひねくれていても鋭い感性を持つ「チョキ」かもしれない。あるいは、どこまでも優しくて、人を包み込む「パー」かもしれません。

大切なのは、「私はどんな手なんだろう」と、時々自分に問いかけてみること。でも、焦らなくて大丈夫。
人はその時々で、グーのように強くなったり、チョキのように鋭くなったり、パーのように優しくなったり、いろんな自分を持っているものです。

この言葉は、あなたにそっと「あなたはあなたのままで大丈夫だよ」と教えてくれています。周りと違うことを、恥ずかしいなんて思わなくていい。違いがあるからこそ、人は支え合い、助け合って、共に生きていけるのだから。

そして、もうひとつ大切なことがあります。それは、自分とは違う誰かを、ちゃんと受け入れてあげること。
その人がグーでも、チョキでも、パーでも、違うことを楽しみながら、認め合って生きていけたら、きっと今よりもっとあたたかい世界になるはずです。

あなたはあなたのままで、しっかりとこの世界に必要とされています。あなたにしかできないこと、あなたにしか伝えられない想いが、きっとあります。だから、どうかそのことを忘れずに、今日もあなたらしく、歩いていきましょう。

この言葉は、あなたのそばで、そっと寄り添いながら、「そのままでいいんだよ」と、やさしく語りかけてくれているのです。

引用元

小山宙哉『宇宙兄弟』第5巻、第39話「グーとチョキとパー」、講談社、2009年